その後



「――ジョパンニは め を ひらきました。もとの おかの くさのなかに つかれて ねむっていたのでした……」
 みやざわけんじの『銀河鉄道の夜』は、数ある絵本の中でも、わたしがとびきり、大好きなお話です。とくに、この絵本は、おおきくて、きれいで、まるで、本物の宇宙のなかにいるみたいな気持ちになります。
 コンペイトウをまた一つ、口の中にいれて、わたしはページをめくります。コンペイトウも、わたしがとびきり、大好きな食べ物です。あまくて、こりこりしていて、とってもしあわせな味がするのですもの。
 だけど、これがおかあさんのひざの上なら、もっとしあわせなのにな、とわたしはおもいます。
 おかあさんのお腹は、いま、まんまるにふくらんでいて、いぜんみたいに、わたしをおひざにのせて、絵本を読んでもらえません。
 おかあさんを取られたみたいで、すこし、わたしは悲しいのですが、弟が生まれてくるのは、それよりもっとずーっとうれしいので、わたしは一人で絵本をよみます。なんといっても、もうすぐ、おねえちゃんですから。
 赤ちゃんの性別は、本当のところ、まだ、わかりません。もう、お腹の赤ちゃんは、男の子か女の子かわかるほどにおおきくなっているのですが、お楽しみで、とってあるのです。そのほうが、どきどきは、いっぱいになります。
 でもね、わたしは知っているのです。生まれてくるのは、ぜったい、弟に決まっています。
 おかあさんが教えてくれました。わたしは、ほんとうは双子さんだったそうです。ですが、いつのまにか、おかあさんも気づかないうちに、双子さんのかたいっぽうが、いなくなってしまったのです。
 そういったことは、ときどき、あるそうです。
 だけどね、わたしは知っているのです。彼は、地球行きの汽車に乗りおくれただけなのです。だから、次に生まれてくるのは、男の子にきまっているのです。
「――そのひは いちねんに いちどの ほしまつり の ひ でした」
 この絵本も、もう、ひとりでずいぶんよめるようになりました。なんどもなんども、よみましたから。
 彼が生まれたら、絵本をたくさんよんであげます。『ぎんがてつどうのよる』は、とびきりたくさん、よんであげます。きっと、彼も、だいすきになるにちがいありませんから。
 そして、今度こそ、お星さまの欠片を、食べるのです。こりこり、甘い、コンペイトウを、いーっぱい、ね!

☆ おしまい ☆

注)本文中の文章は、『銀河鉄道の夜(原作/宮沢賢治・影絵と文/藤城清治)講談社』より引用しました。とても美しい絵本です。







>> まとめるのに数ヶ月かかったわりに、全体的に適当感が溢れかえっていますね!何も言わなくても分っていただけるでしょうが、『銀河鉄道の夜』を読んだあとに思いついたネタです。初めてまともに文章で読みましたが、めちゃくちゃ良かった。賢治サイコーでした。『風の又三郎』も読みたいなあ。小学三年生の頃は分らなかった(挿絵が綺麗だったことしか覚えてない)。
今だったら分るだろうか。数年越しで理解する話がたくさんあります。もっと小さい頃に理解したかった。

>>補足の補足
高校三年生のころの作品。確かこのころ、松谷みよ子やら安房直子にはまり、童話テイストの話ばっかり考えていました。銀河鉄道なんかが出てきますが宮沢賢治のスケールには程遠く残念な感じに仕上がってます。